原発から何キロまで避難すべきなのか

テレビでさまざまな数値が出てきては、「安全です、安心です」と連呼されている。はたして信じて良いものか。そこで、ちょっとした計算をすることで、どの程度安全なのかわかるようにしてみたい。

文部科学省では毎日2回「放射線量率」を公表している。公表されているのは下記サイト。

http://eq.wide.ad.jp/

ここに示されている数値は、原発の状況や風や天候に左右されるので日によって変わるが、本日の数値を参考に考えてみたい。

一般の人が「1年間」に被曝しても良いとされている「放射線量」の許容量は1000μsv(マイクロシーベルト)である。一方、上記サイトで公表されているのは、「放射線量率」である。「率」というのは、「1時間」あたりの放射線量を指している。単位の最後に[/h]または[/時間]がつく。

いったい1時間にどのくらい被曝すると1年間で1000μsvになるかを計算してみよう。小学校算数の計算で十分だ。

計算式は 1000÷365÷24

答えは 0.1141μsv/h

だから、文部科学省が公開している数値で、およそ0.114マイクロシーベルト/hより少なければ、なんとか許容量の範囲内ということだ。

これをもとに、だいたいどのくらいの日数その場所にいたら、年間許容量の上限になるのかということを数値で表してみたい。文部科学省公表3月28日19:00版の数値でいくつかの地点を採り上げると次のような表になる。

場所 放射線量率 何日いてよいかの計算式 何日いてよいか
原発から北西30km地点 45μsv/h 1000÷45÷24 0.9日
原発から北西40km地点 8.0μsv/h 1000÷8.0÷24 5.2日
原発から北西55km地点 5.0μsv/h 1000÷5.0÷24 8.3日
原発から北西60km地点 3.2μsv/h 1000÷3.2÷24 13日
茨城県水戸市 0.24μsv/h 1000÷0.24÷24 173日
東京都(新宿区) 0.114μsv/h 1000÷0.11÷24 365日

この表で、たとえば水戸市にはギリギリ173日いても良いということになるが、水戸で173日過ごした後、まったく放射線のないところ(そんなところは無い)に移住したとしての話だ。もちろん屋外での計測だろうから、そのままの計算にはならないだろうけど。

それにしても、これは驚愕の数値だ。原発から30km圏内の避難しか問題にされていないが、方角によっては、60kmでも13日間で年間許容量を超えてしまう。きわめて危険だ。40km地点になると、たったの5.2日間。30km地点にいたって、一日も待たず年間許容量を超え、92日間で従来の原発作業員の年間被曝許容量(100ミリシーベルト)に達し、231日間で今回乱暴に改定された原発作業員の年間被曝許容量(250ミリシーベルト)に達する計算だ。

東京だって、いまの数字でギリギリ年間許容量だ。テレビで東京―ニューヨーク間の往復フライトで190マイクロシーベルトになると言っていたから、東京住民が飛行機に乗る場合、年間許容量を超えることを覚悟しないといけないことになる。ちなみに、3月15日の東京の放射線量率は0.8マイクロシーベルトで少しずつ低下している。とはいえ風向きにもよるし、今日は原発建屋の外でも1000ミリシーベルト/h(=1000000マイクロシーベルト/h)という強烈な数値が観測されている。今後それらが拡散しないという保証はない。


中村隆市ブログ「原発事故についての重要なメッセージ」には海外の専門家(放射線リスク欧州委員会ECRR)委員)へのインタビューが掲載されている。そこには、次のようなやりとりがある。

Press TV:日本では原発から20キロ以内に住む人々に避難命令が出されましたが、あなたが日本国内にいて意思決定の立場にあったらもっと広い地域の住民に避難勧告しますか?
 
バスビー教授:ええ、最初からそうします。実際、私たちは100キロ以上にしたらよいというアドバイス欧州委員会のウエブサイトなどでしました。今や彼らは東京の住民を避難させることを考えなければいけないと思います。彼らは(を)どこに避難させる(のか)という問題は悪夢です。

この100km圏の避難というほうが、正しい判断ではなかろうか。いったん被曝して病気になってしまうと、その人の看病に人手と時間とお金をとられることになる。復興どころではなくなるだろう。


参考までに、私のいる愛知は今のところ、ほぼ0.04マイクロシーベルト/h。年間にすると0.04×24×365=350.4マイクロシーベルトとなり、一年暮らしたとしても年間許容量の1/3程度。


追記

ちなみに発表資料の放射線量から推測される被曝量はあくまで外部被曝の量しか示していません。放射性物質を吸い込む、食べる、飲むといった内部被曝があった場合には、これに加算されていきますので、要注意。