放射能の雨

東電の原発事故があったあと、ある記憶が鮮明によみがえってきた。それは、小学校の低学年の時、教室の窓から見た雨の景色だ。

大粒の雨が妙に白く光っているのを見て、小学生同士で、「放射能の雨だ」などと言い合っていた。

白く光って見えるのと放射能は関係ないだろうからたぶん勘違いだろう。広島市内の小学校で原爆についての教育がきちんとされていたために、みんな放射能の雨という言葉を知っていた。だから、そういう言葉が自然に出てきたのだろう。

しかし、単なる思い込みや誤解だけでもない。

私は1964年生まれだ。その頃、正確に言えば1963年まで、いくつかの国で地上での核実験が行われていた。その結果、地球の大気中に大量の放射能が飛散していた。だから、私たちが生まれた頃には、雨が降ると、実際に大気中の放射能が洗われて地上に降ってきていたはずだ。

教養のある親は、雨に当たると被曝すると考え、家庭でも子どもに雨に当たらないように注意を促していたことだろう。私自身、物心ついた頃に、母から、「雨には放射能が含まれている」というようなことを聞かされた記憶がある。

日本では、大阪や名古屋でも微量だが放射性セシウムが観測されている。これは、東京電力福島第一原発から直接流れてきたというよりは、爆発事故で大気圏に放出された放射能が地球をぐるぐる回って降ってきていると考えた方が良いだろう。実際イギリスやアメリカでも微量の放射能が観測されているわけだし。

しかし、福島の周辺の地域では、そのような地球を何周もしているような微量な放射能だけでなく、事故のあった原発から直接、少しずつ漏れ出している放射能が空気に含まれているだろう。その放射能が風向きによって福島を中心としたかなり広い範囲に、雨とともに降ってくる危険性がある。

最近、「子どもたちを学校のプールに入らせて大丈夫なのか」ということが話題になっている。水道からプールに入れる水に放射能が無かったとしても、雨が降ればプールに放射能が入り込むからだ。

今朝のワイドショーでは、千葉県の公園で、雨による放射能の変化を計測していた。その計測では、様々な場所で、雨の前の数値より雨の後の数値の方が2〜3倍高くなっていた。滑り台の一番下の地面とか、排水溝など、水が集まる場所は特に高い数値になっていた。

これが雨に含まれた放射能によるものなのかどうか、私には断定できない。しかし、微量であっても、泳いでいれば少なからず水を飲んでしまうので、単なる外部被曝だけでなく、内部被曝の危険も考慮する必要があるだろう。学校の屋外プールでは、放射線の値をきちんと計測することが必要なのではないだろうか。