いまそこにある危機

内田樹氏のTwitter@levinassienを読んでて気づいたのだが、ネットのニュースを頻繁にチェックしないと、きわめて重要なニュースを見逃してしまう。

今朝午前3時台のAsahi.comには、福島原発の事故がレベル6「相当」になったという記事「福島第一原発事故、スリーマイル超えレベル6相当に」が配信されている。しかし、それはお昼にはもう見出し一覧からは消えていた。

もちろん、「経済産業省原子力安全・保安院がレベル6と言っているわけではない。しかし、経済産業省が「レベル4」と言っていたときにはすでにレベル5相当だったのだし、現在、レベル5だと言っているが実際にはレベル6「相当」なのでこのようなニュースになるわけだ。レベルを低めに見積もって現実問題として何の得があるのか理解に苦しむが、これがチェルノブイリ事故に匹敵するレベル7になる可能性はごく近い未来かもしれない。

内田さんは、Twitterで、スリーマイル超え(本当に3milesなら被害は限定的なのだが)なので、スリーマイルのようなことにはならないと言っていた専門家に「謝罪すべきだ」と言っている。本当にその通りだが、まあほとんどが専門家ではなく専門屋であって、「専門である」ことをウリにして地位と研究費を稼いでいるのが実情なんだろうけれど。

それにしても、地震の映像と、それに続く原発事故に、ほとんどのオーディエンスは釘付けになっていたと思ったら、さっさと飽きてしまったようだ。テレビ番組は、地震速報が多めに入ることを除いて、何もなかったかのように震災以前のような状況に戻っている。リキッドモダンな後期近代の短期集中消費に慣れてしまった現代人の悲しい習性だろうか。人の暮らしだけでなく、核燃料棒までリキッドにならないことを祷るばかりだ。

しかし、本当の危機も正念場も、まさにこれからなのだ。今日も原子炉冷却水の一万倍の放射性物質で被曝した福島原発の「協力会社」の「社員」のことがニュースになっていたが、高濃度の放射性物質が漏れ出していることが確認されたわけだ。原発の周囲―といってもどれぐらい広大な周囲か計り知れないが―は何十年も生物が立ち入れない死地と化してしまうおそれが高い。

震災に際しても現地以外の人の多くは本当の危機を理解していないのだろうか。ドラマやバラエティに浮かれている間にも、刻々と危機―生物学的、経済学的な危機―は忍び寄ってきているというのに。