動物は避難できない Animal can't evacuate.

福島では、多くの人が避難を強いられている。

それも、かなり控えめな避難指示・屋内待避地域指定においてさえである。

政府の避難指示・屋内待避はそれぞれ20kmとか30kmという範囲だが、これはかなり怪しい数字だ。米軍の80km圏立入禁止の方がかなり信憑性があると思う。

文部科学省の放射線データを見ても、風向きによるのだろうが、原発から40km地点で8.5μシーベルト/hが計測されることもある。これを1日24時間浴びたら、8.5×24=204μシーベルトになる。一般人の年間線量限度が1000μシーベルト/年なので、その40kmの地点では5日で年間限度を超えてしまう。1年間これが続けば74460μシーベルト(74ミリシーベルト)という高い値になる。どれぐらい高いかというと、原発などで作業する人の年間被曝量の限界が100ミリシーベルトだから、その限界に近い値なのだ。

福島第一原発から120〜130km離れている茨城の水戸市でも、ほぼ0.3μシーベルト/hを超えた状態が続いている。これも計算してみると0.3×24×365=2628μシーベルトとなり、一般人の年間線量限度の2.6倍程度になる計算だ。

これらの数字を見れば、本当はもっと広範囲に避難しなければならないことは一目瞭然だ。政府が避難しろと言わないのは、避難させるのに必要な交通手段や避難先を確保できないからだろう。

しかし、そんな悠長なことを言っている場合ではない。子どもだけでも緊急に疎開させるべきだろう。

ここまでは人間のお話だ。津波は別として、原発事故は人間が引き起こした災禍なので、人間にとって「仕方ない」面もある。もちろん、原発を作って儲けているのも電気を使っているのも、圧倒的に都会の人。そういう意味で地元の人のほとんどは被害者だろうから「仕方ない」では済ませられないだろうけど。

それでも、人間は放射線の危険性も知ることができ、それを計測する術もあるから、逃げるという判断ができる。

他方、福島第一原発の周辺で暮らしている動物たちは逃げられない。危険であることすら知らずに棲み続けている。彼らのために方舟をつくるよう啓示を受けた人は誰もいないだろう。

動物たちは死産になったり、奇形などが生まれたりして、死滅していくのだろうか。とても気になるところである。動物にとって人間は、つくづく迷惑な生き物であると思う。