憲法記念日に思う

今日は憲法記念日名古屋市公会堂で沖縄問題を中心とした集会があった。

まずはサンシンやエイサーの歌や演奏。その後、津田塾大学の教員を経た後、沖縄に在住して平和問題を発信し続けているダグラス・ラミスさんの講演だった。

最初に広荑隆さんの『東京に原発を』を引き合いに出して、基地も東京にと切り出した。本当に必要だというなら、必要だという人たちがいるところに作るべきだと。

東京に原発を! (集英社文庫)

東京に原発を! (集英社文庫)




まさに、沖縄問題と原発問題は相似形だ。強者が「必要だ」と言いながら自分の住んでいる近くには作りたくないというワガママな主張そのものだ。

沖縄で(幸福実現党のような右翼カルトを除いて)はじめて基地を容認する知事候補が立候補しなかったということが新しいらしい。普天間基地の移転にかかわって、伊波氏がグァム(海外)に移転を、仲井真氏が県外に移転をと主張したとのこと。そして、ラミス氏は、仲井真氏が勝利したことは、弱い立場にあるグァムに基地を押しつけるのではないという点、米軍基地が必要というなら、ヤマトも平等に基地を引き受けるべきだと点で大きな意味があったのだという。

そもそも基地をすべて撤去すればよいという主張も理念的にはあり得るが、では「いつまで沖縄がガマンすればよいのか」となると、何も問題を解決していないのだという。ガマンする期間があるなら、みんな平等にガマンすべきだということだ。

最後のまとめで、名古屋大学の本秀紀氏が、本当に基地をすべて撤去すべきだと主張するなら、ヤマト(本土)で過半数の人の支持を得るための本気の運動をしなければ、ラミス氏の問いに向き合ったことにならないと言ったのが印象的だった。

おもしろかったのは、移転先がないといいながら、日本政府が、普天間普天間以外の移転先をちっとも本気で探していないというくだりだ。ラミス氏が上げた例のいくつかは下記のようなもの。

  • 仮想敵国を考えれば九州がいいはずだ。佐賀空港も赤字だからいいのではないか。
  • 多くの空港で利用が少なく赤字だから移転可能ではないか。神戸空港に行ったとき、飛行機を一機しか見なかったし、周囲にほとんど人も住んでないし、墜落しても海だし、さらに埋め立て進めているので最適ではないか?
  • 仙台空港が今回の津波によって被害を受けたとき、米軍が復旧に力を尽くしてくれたので、米軍に感謝している人が多いはずだ。移転してくるのに反対する人は少ないのではないか。
  • 東京の横田基地に長年反対してきた市議が、今回の、一人しかはみ出さない地方選挙で、たった600票足らずの得票しかできずに落選したというから、基地を移転しても反対する人は600人ぐらいしかいない。ここはどうだろうか?

個人的には、多くの人は、グァムの人の気持ちを考えて仲井真氏に投票したのではないだろうと思うが、論理としてはおもしろい。

今回のラミスさんの主張は、新著『要石:沖縄と憲法9条』に基づくものだと思う。

要石:沖縄と憲法9条

要石:沖縄と憲法9条

僕の感想としては、米軍基地が必要だ必要だという人がこんなにも日本にたくさんいるんだから、日本は一旦基地をすべてアメリカに返上した上で、必要だと言う人が地元に誘致活動をすればよいのではないか、というもの。アメリカを説得するのもきっと簡単だよ。だって米軍が必要だって譲らない人が日本には驚くほどたくさんいるんだからネ。



さて、一番気になったのは、今回の震災をうけて、「現在の憲法は非常時に関する規定がない。非常時にもっと政府に権限を集中してあれこれできるような条項を盛り込んだ憲法にすべきだ」と、火事場泥棒的に改憲しようとする人々が気勢を上げていることだ。

政府が非常時に権限を集中したらどうなるだろうか。今回の政府の動きをつぶさに見れば分かるように、「流言飛語を防止する」という名目で、自分たちに都合の悪い情報が流通しないようにしようとしたり、20mSv/yearに抗議して内閣官房参与を辞任した小佐古氏の記者会見を「守秘義務」と脅して阻止したりするなど、国民の知る権利を制限する方向であれこれ画策することは火を見るより明らかだ。今回は、福島の親たちが子どもを守るために20mSvという年間被曝許容量に反対して交渉したりしているが、こういう動きも非常時を理由に牽制されるし、その報道が禁止される可能性は大きいだろう。

それよりも、いまの憲法をきっちりと活かして「福島の子どもたちに憲法第25条(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)をどう保障するのか」というような視点から、一人ひとりの主権者の権利がきちんと護られる方に針が振れる方が、はるかにまともな政府の対応になるのではないだろうか。