学生と一緒にFD(Faculty Development)

本日は、学生と一緒に大学の授業を変えるというFDを企画・運営。沖縄から大学教育改革で有名な浅野誠さんに来ていただいた。

まずはじめに、浅野さんが授業づくりに取り組むようになった歴史を語ってもらった。高校の時に、みんなが寝ている授業に対して、教師に要求を出したら、「ではおまえがやってみろ」と言われたのが、そもそもの始まりらしい。調子に乗ってさらにやらせてもらって計3回授業をやったそうだ。その後、様々なエピソードを語ってもらった。

  • 初めての授業で講義ノートをバッチリ13ページにわたって作成して授業の臨んだのだがシャイなので下を向いて授業をしてしまったこと。
  • 学生が授業を理解していなかった原因を探すべく自分の講義をカセットテープに録音し、「これは学生には分からない」と納得したこと。
  • 琉球大学から中京大学に転勤し、体育学部の学生を持ったときに、これまでのやり方がまったく通用しなかったこと。

(昨日のFDではお話にならなかったが、イベント前にお話ししているときに、沖縄の大学で新入生入門ゼミのよう科目で単位を落とした学生ばかりを集めたリカバー授業を担当しているということ。どんな風に授業をやっているのか、ぜひ見学に行きたいと思った。)

いまではかなりのエンターテイナーの浅野さんだが、様々な失敗を乗り越えて今があるというのがよく分かった。また、多様な大学で教育に関わっている様々な学生を見てきているから、大学の地域ごと、種類ごとの学生の違いをよく掴んでおり、我々が「当然」と思っていることは当然でなく、場合によって我々が「良い」と思っている学生の態度ですら相対化しくところに、大いにインスパイアされる。

単にテクニックとして授業の方法を考えるのではなく、伝えたい内容を教員側から一方的に伝えても学生には何も伝わらないことに対して、どうすれば本当に伝わるのかを考えてきたことが読み取れる。少なくない大学教員が「学問内容をきちんと講義すればあとは分からない方が悪い」と思っているフシがあるが、結局、教員の仕事は「相手に伝えてなんぼ」だという立場だ。受け手=学生側に責任を押しつけるのではなく、送り手=教員が責任を持つと言うことだろう(これは単位認定が非常に厳しい教員の問題とも関連する)。

その後、学生さんがメーリングリストなどで議論した大学の授業に対する意見に私見を交えながらプレゼンしてくれた。

ここでも、「学生さんたちは結構考えて授業を受けているんだなぁ」と再認識。学生が良くない例で挙げる授業、赴任したばかりの頃はけっこうそういうところあったなぁ、と思い出す。いまでも一部当たっていてギクってするんだけど。さらに「こういうふうにしてくれると良い」として挙げられた例は、すぐにでも導入できるものもあって、参考になった。せっかくいい考えを持っているんだから、普段から受講生がアドバイスしてくれると、リアルタイムで授業にフィードバックできるんだけど、学生は言っても変わらないとあきらめているんだろうか?

そして最後に浅野先生にワークショップをやってもらった。ポストイットを使ったワークショップで、アイス・ブレーキングから進めていって、徐々に「授業を変えるアイディア」をみんなで出し合いアイディアを形にしていくアクティヴィティへと進んだ。最後は4つのアイディアが創造された。その内容については省略するが、出来あがったアイディアを実施すると授業が見違えるように良くなると思われるものもあった。単に活動的なだけでなく、学習が深まるという意味でも有効だと思う。ここで見落としてはならないのは、できあがったアイディアの素晴らしさだけでなく、それを生み出していく参加型のアクティヴィティの過程のおもしろさだ。一人ひとりの意見が集まって集約されていき、それらを巡って、さらに豊かなアイディアが発展していくように組織されていた。

下世話な話だが、お金を払っても参加したいと思う人がいても良さそうな内容だったが、参加者が少なかったのがとてももったいかったと思う。