嫌韓フジテレビ抗議デモを考える

俳優の高岡某のツイッター騒動以来、盛り上がっていた韓流ドラマ放映是非問題。昨日、フジテレビに抗議するデモが行われたという。

この問題は、最初の発言からネットで炎上し、芸能人のナイナイ岡村氏やビートたけし氏らが「いやなら見なければ良い」と発言したことがさらに騒ぎを大きくした感がある。

そこで、いくつかのポイントにわたってこの問題について考えたい。

第1に「イヤなら見なければ良い」問題について

この問題については、テレビ局は限られた電波を割り当てられているのだから、公共性を担保しなければならないということで、一部の人たちが、あたかも決着したかのように語っている。しかし、ここでは、視聴者の多様性と番組やテレビ局の多様性という問題が抜け落ちているように思われる。「そもそもテレビを見るな」という意味なら、批判されてしかるべきだろうが、いろんな局がいろんな番組をやっているのだから、テレビを見たいなら他の番組を見れば良いだろうという意味なら、十分に納得できる主張である。ある時間帯に自分の見たい番組がないときに、たまたま韓流ドラマをやっていたからけしからんというのであれば、それを世間ではイチャモンという。
もちろん、誰も見たくないのに、洗脳よろしく放映し続けているなら大問題だろうが、韓流を見たい人たちは結構いるということも忘れてはならないだろう。一定の視聴率を稼がねば、テレビ局は経営が成り立たない。また、いろんなところで韓流ブームと言われたり、私の家族・親族あたりでも韓流ドラマにはまっている人は結構いるから、あながち外れてはいないはずだ。ないとは思うが、もしフジテレビが韓流の放送をやめるといったら、やめないでというパレードは、抗議デモの何倍もの規模で実現するのではないか。
テレビのビジネスモデルが広告モデルだから、テレビに出ている芸能人が見なければ良いというのは間違いだという指摘もあるようだが、それも、上記の多様性問題を考慮に入れれば、さしたる問題ではないと思われる。ついでながら、高岡某の韓流批判発言は、とどのつまりは同業者批判であり、韓流がはびこれば自分の仕事=ギャラが減るということにもなると思うのだがどうだろうか?

第2にそれでも現在のテレビは問題だということについて

フジテレビは韓流のドラマを流すだけではなく、それでブームをつくって韓流CD・DVD・書籍などを売ってかなりの利益を上げていると聞いた。まだ未確認だが。もしそうだとすれば、これは、日本のメディア規制の甘さの問題だろう。テレビはとても大きな影響力を持つ。だから、テレビでブームを作っておいて、自ら関連本やグッズを販売すれば、多大な利益が得られる。逆に言えば、商品を売るために、テレビ局そのものが広告となってしまうという問題だ。これはきちんと批判しなければならない問題だと思う。
しかし、その場合、これはフジテレビだけの問題ではないはずだ。たとえば、テレビ東京ケロロ軍曹だの、イナズマイレブンだのを放送して,マンガ・アニメ・オリジナルグッズ等を販売しているとすれば、それも問題にしなければならないだろう。そうだとすれば、これは一テレビ局の問題ではなく、日本のメディア行政の問題であり、テレビ局が出版社や映像・音楽販売会社を所有できないよう規制すべきだと、政府に対して抗議デモを行うべき問題だ。

第3に、フジテレビ抗議デモの盛り上がりについて

そもそも、デモの写真などをみれば、ここに結集した人の少なくない部分が、明らかに嫌韓のウヨさんたちであることが分かる。もし、本当にウヨの人たちに「愛国心」があるなら、福島第1原発事故で、ここまで日本の国土と日本人の生命が危機にさらされていることについて、どう考えるかの方がはるかに重大な問題だろう。それなのに、ここではさして騒がず、嫌韓のためなら、騒げそうと見るとどんな瑣末な問題にでも飛びつく状況を、じっくり振り返ってみた方が良いと思う。
実際、右翼民族政治団体一水会」の代表を長くつとめ、現在顧問である鈴木邦夫氏も、反原発デモに参加するなど、反原発色を鮮明にしている。彼をそこに動かしているのは、ほかならぬ愛国だろう。