震災さえも自己利益に利用する財界

経済同友会の桜井代表幹事が、新潟の「柏崎刈羽原子力発電所の休止炉を早急に再稼働するべきだ」と主張しているらしい。

夏場の電力不足を回避するため、新潟県柏崎刈羽原子力発電所の休止炉を早急に再稼働するべきだと指摘した。

「桜井同友会代表幹事、柏崎刈羽の再稼働を提言」

柏崎刈羽原発活断層のすぐそばにある原発で、2007年の耐震設計強度を超える中越沖地震でシュラウドのひび割れという重大事故を起こしたばかりだというのに。かろうじてわずかな放射能漏れで済んだものの、耐震強度を超えた地震で無事だったのは日本の原発が素晴らしいからではなく、単に運が良かっただけだということを理解しないといけない。

先日も日本経団連の米倉会長が、福島第1原発の事故について

千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ

と、国と東京電力原発推進政策を擁護したばかりだ。大企業経営者団体のそろい踏みといったところ。

原発反対の動きが加速しているのに危機感を覚えて、「原発を稼働しないと停電になるよ〜」という脅しで、原発賛成派の巻き返しをはかりたいのだろう。

彼らは、原発で一旦事故が起これば、どれだけの損失が出るか、目の前で起こっていることをよく理解できないらしい。どれだけの損失になるか、国際的な信用をどれほど失うか、そしてどれほど食料が危機に晒されているか、自分の会社の利益以外の計算は苦手らしい。いや、計算済みで、それを消費税増税の口実にしたいのかもしれない。

それに加えて、今回の原発事故をテコにして、従来からの自分たちの政策を実現しようとしているにいたっては、図々しいにもほどがあるといったところだ。
上記記事では、

桜井氏は「東北地方を日本創生のモデルにする」と強調し、道州制の導入が必要だと強調した。

と書かれている。

要するに県の枠を超えた大型開発をやりやすくして、巨大企業がその開発に参入しようというわけだ。

海外のクリーン・エネルギーに成功している国は、電力の独占ではなく、個人・NPOなどが電力に参入して多極分散型となっている。福島では、原発を誘致しなければ生活が成り立たなかったというが、それを作りだしたのも一極集中経済が原因だろう。いま求められているのは、あらゆるところでの多極分散なのだ。

財界は、新自由主義という亡霊に取り憑かれて、その先にある人間的で豊かな未来の到来の阻害要因になっていることが、ますますはっきりしてきたように思う。