群馬県桐生市のいじめ自殺調査報告書

群馬県桐生市で、小6の女子がいじめを苦に自殺したとされる事件に関して、「群馬小6自殺『いじめが唯一の原因ではない』 第三者委」という記事が出ていた。

本来、報告書を手に入れてから発言すべきなのだが、ひとまず、これまでメディアで採り上げられたことを順を追って見ておきたい。

すでに新聞紙上でも明らかになっているが、当初いじめを把握していなかったという学校側は、調査の結果、

給食の時間に同級生がグループで机を寄せ合っている中で、一人で食べるなど無視される状態が継続していたことや、「臭い」「近寄るな」などの言葉の暴力を受けていたことが確認できたとし、こうした点を踏まえ、学校は「いじめはあった」と認定したとみられる。(読売新聞)

とある。そもそも小学校は給食は配膳や片付けも含めて指導するものなので、担任が孤食に気づかないわけがない。それを裏付けるような記事もある。

遺族が「いじめが原因」と訴えている問題で、担任教諭が県警の聴取に対し「明子さんへのいじめがあった」と認めていることが1日、捜査関係者などへの取材でわかった。学校側はこれまで「いじめという認識はなかった」と説明しており、学校と担任の認識が食い違っている。
毎日新聞

小学校の担任の女性教諭が31日、亡くなってから初めて明子さん宅を訪れた。父親の竜二さん(50)によると、担任は「私の指導力不足でこういうことになって申し訳ございません」と謝罪したが、同席した校長は、 いじめの有無について「調査中です」と述べるにとどまり、認めることはなかったという。(読売新聞)

つまり、担任はいじめに気づいてはいたが、いじめを止めるまでの指導ができなかったのではないかと推測される。

このような食い違いから、いじめによる自殺だと考えている両親と、いじめによる自殺ではないと言いたい校長・学校の見解が対立して、冒頭にある第三者委員会による調査になったわけだ。

しかし、この調査委員会の運営は正しかったのだろうか。産経の記事「小6自殺 第三者委、非公開に疑問の声 調査結果問われる信憑性 群馬」という記事によると

市は因果関係を調査することになった第三者調査委の1回目の協議を今月8日夜、秘密裏に実施。市は翌日の記者会見でようやく実施事実を明らかにした。市は秘密会議にしている理由について、「中立の立場を確保し、調査への影響を避けるために非公開にした。委員の意思で決めた」と説明している。

とある。このように第三者委員会は秘密会で行われたのだが、問題は最後まで秘密のままで最終報告書を出したことである。

三者調査委の委員長を務める新井博弁護士は非公開の理由について、「非公開なのは当たり前だ。委員の名前の公表については最終報告書に記載されるのでいいのではないか」と主張。

もちろん、非公開にしたくなる理由もわかる。たとえば、公開にすると委員構成がわかり、各委員に方々から圧力がかかるかもしれない。そんなプレッシャーがかかるなら委員を引き受けたくないという人もいるかもしれない。

しかし、まず委員名を公表しないということは、各委員は委員の名において調査できないということだ。誰かに話を聞かせてもらうにしても、個人として聞くのには無理と限界がある。そう言う意味で、積極的調査活動が展開できてないおそれがある。

百歩譲って非公開にするとしても、たとえば、委員名を伏せた議事要録を公開するとか、中間報告をして当事者が意見を述べる場を設けるなどの配慮が必要ではないか。

遺書が無いことをよいことに、いきなり最終報告書として、自殺について「いじめが唯一の原因ではない」と言われて誰が納得できるだろうか。

いずれにしても、「唯一ではない」というからには、報告書には他の自殺の原因が書かれているに違いない。最終報告書に名前が記載されている委員は、それについて説明責任がある。一人の子どもの心と命が押しつぶされたという重みを忘れないで欲しい。